Disability × Digital Innovation

障害者や高齢者などのくらしに役立つ、個別カスタマイズされた道具である「自助具」を、3D プリンタなどのデジタルファブリケーションを活用して製作し、オープンソースにする。ムーブメントの先にある未来とは?

―林園子(作業療法士・ファブラボ品川ディレクター)

障害者や高齢者は、個別にカスタマイズされた道具を使うことで、できる事が増える。日本では、そのような道具を「自助具」と呼び、従来より手作りしてきた。3D プリンタなどのデジタルファブリケーション技術を応用することで、スムーズなカスタマイゼーションが可能となり、デザイン性も向上する。私は 2018 年より、3D プリンタで自助具を製作するコミュニティや自助具の 3D モデル共有プラットフォームの構築、そして、障害者や高齢者も一緒につくるイベントである「インクルーシブ・メイカソン」について研究してきた。このメイカソンは、私が約3年前に、イスラエルの非営利団体「TOM(Tikkun Olam Makers」の活動に出会い、大きな感銘を受け日本で始めた活動である。イスラエルのメンバーと協働しながら、現在も定期開催しており、イベント成果を TOM Global のウェブサイト上で共有している。

これまで製作した自助具は、デジタルの強みを最大限に活かすことが出来るよう、そのデータのほどんどをオープンソースにしている。そうすることで、限られてはいても必要な人に、必要な道具を届けることができる。研究を進める中で、この活動が未来にもたらすであろう 3 つの価値が明らかになりつつある。それは、「受容」「結束」「前進」だ。

デジタルがもたらす 3 つの価値

日々変化する私たちに個別最適化された道具は、完璧ではないかもしれない。しかし、受け入れ、工夫して使うことで、できなかったことは出来るようになり、暮らしが豊かになる。関わる周囲の人々が、道具のカスタマイゼーションを通して、共に道具の先に繋がるお互いを受け入れ、出来た喜びを分かち合いながら、諦めずに前に進み続けることができる。
長く「生産性」に縛られ、過剰な分業分化に疲れた現代社会を、再び有機的につなぎ直すためのデジタルイノベーションは、もう始まっている。

年配の男性人の肖像画

林園子 Sonoko Hayashi

作業療法士,ファブラボ品川ディレクター,一般社団法人ICTリハビリテーション研究会代表理事,2018年より3Dプリンタを活用した自助具を製作するコミュニティやプラットフォーム構築の研究に従事。障害者と共にチームで自助具を製作するイベントである「インクルーシブメイカソン」を定期開催している。

「はじめてでも簡単!3Dプリンタで自助具をつくろう」三輪書店(2019)の編・著者
2021年1月16日より2月27日まで、駐日イスラエル大使館,厚生労働省などの後援によるオンラインイベント「2020TOMメイカソンTOKYO」を主催している。