IMA SONG LINES-In Search of Lights- 『コタツからはじまる、歌と旅の記憶』

『Like a Skipping Stones』

“沖縄でもない。奄美でもない“
そんな⾔葉が添えられた沖永良部島の CD を眺めながら、
僕は島の⼩さな空港の⼩さな⾷堂で、 “ピラフでもない。焼き飯でもない”物を味わっていた。

2018 年 11 ⽉ 9 ⽇、未知の島での 3 時間だけのトランジットの時間。 ⽬の前の海では新しいバンド仲間、アサーフ・タルムディとマニュハ・ビコントが泳ぎなが ら気持ち良さそうに、乗り継ぎの⾶⾏機の到着を待っている。 ”Like a Skipping Stones” ーまるで”⽔切りの⽯“のような僕らの歌の記憶を辿る旅のはじまり。

きっかけは 2017 年の冬、 古⺠家 SHIKIORI を訪ねてきてくれたアリエ・ローゼンとの出会い。 居間のコタツでお互いの⽣まれた国のことや⾳楽、伝統と⼈々の話をした。 ”IMA”(居間)にはヘブライ語で⺟という意味を持つという。 與那城美和の歌う古謡を聞いていると、
「マニュハ・ビコントの歌を思い出す」とアリエが呟いた。 宮古島に残る古謡を聴いて、ポーランドの古謡を思い出したという。 その⾔葉がきっかけとなり、 僕は国境が⽣まれる前の世界の音楽、”SONG LINES”について考えるようになった。

『異なる世界が出会い、⼈々を⼀つに結ぶ瞬間』

2018 年春、アリエが”Wi-Fi ルーター”となり、テルアビブのアサーフ、ワルシャワのマニ ュハと⾳の⽂通を始めた。
それから数ヶ⽉後、美和さんも加わり、僕ら 4 ⼈は屋久島で”合宿”をおこなった。 楽譜は使わずに、お互いの歌を聴き合い、それぞれの記憶を辿り、⾳を重ねていく。 “作曲”というより、”発掘”に近い。
こうして、『IMA SONG LINES』は⽣まれた。

それから約⼀年後。
ワルシャワの街には宮古島の古謡『SUZUME』のお囃⼦が響いていた。 異なる世界が出会い、 歌は国境や国籍という幻想を越えて魂に語りかけ、 ⼈々を⼀つに結んでいく。

コタツで感じた歌の記憶は誰の中にも眠っている。
その記憶を辿ると、歌が描く“古くて新しい世界地図”がみえてくる。
パスポートの⾊合いはそれぞれ違うが、 国境や国籍が⽣まれる前の⾳楽の記憶を辿って、 僕らは歌い、旅を続ける。 ただ、光を求めて。

<『IMA SONG LINES』プロジェクト>

宮古島とポーランドなど世界各地に残る民謡・古謡のメロディーが共通性をテーマにし た、 二人の歌い手、Maniucha Bikontと與那城美和、鍵盤奏者・Assaf Talumdiとコントラバ ス奏者・松永誠剛によるコラボレーション・プロジェクト。 古謡のメロディーをモチーフに即興性の高い音楽を発表、新たなワールド・ミュージック の可能性を提示している。 2018年、沖縄・宜野座村、東京Think of Things、京都芸術センターで日本公演を行う。 2019年、BydgoszczのPomeranian Philharmonic Hall、Warsawのモダンアート建築 空間Dom Keretaなど3都市でポーランド公演を行う。

<メンバー>
Maniucha Bikont
ポーランド出身の歌い手、チューバ奏者。
歌い手としてだけでなく、
人類学者としても活動行っており、 数多くの研究やフィールド・レコーディングを行って い る、ポーランドやウクライナ、ロシア地域に残る音楽の研究を続けている。

Assaf Talmudi
イスラエル出身の作曲家、プロデューサー、鍵盤奏者。
現代のイスラエルの音楽シーンで最も忙しいプロデューサーの一人。
音楽に対する 幅広い知識と好奇心で、土着の文化を掘り下げ、現代に様々なアイ ディアを 持ってよみがえらせる”音楽の考古学者”。

Miwa Yonashiro
沖縄・宮古島出身。母の影響で、小学4年生頃から三線に興味を持ち、弾き始め る。 2008年、琉球新報社主催古典芸能コンクール最高賞受賞。 2016年にはMyahk Song Book”『Longing』を発表し、その後、『Peter Barakan`s LIVE MAGIC 2017』に出演し注目を集める。
宮古島の古謡の研鑽に努め、失われつつある歌の記憶を伝えている。

*Arieh Rosen
イスラエル大使館の文化・科学担当官

『IMA SONG LINES-In search of Light-』の2018年の日本ツアーの模様と、本文中の2019年のワルシャワのDom Keretでの『SUZUME』演奏の模様は「PLAYLIST」のページでご覧いただけます。

年配の男性人の肖像画

Agata Maziarz

松永誠剛 Seigo Matsunaga

コントラバス奏者/作曲家
1984年、福岡生まれ。幼少期を義理の大叔父である作家・大西巨人の本に囲まれて過ごす。17歳の夏をボストンの音楽院で過ごし、その後、NYでマシュー・ギャリソン、コペンハーゲンでニールス・ペデルセンのもとで音楽を学ぶ。エンリコ・ラヴァ、ティグラン・ハマシアン、カイル・シェパード、山下洋輔、大倉正之助、写真家・上田義彦氏の写真とのコラボレーションなど多岐にわたる共演、活動を行っている。オダギリジョー監督作『ある船頭の話』(第76回ベネチア国際映画祭出品)の映画音楽に参加。2017年からは”自然との再会を通じた、人間の再生”をテーマに屋久島の森を舞台にHomenaje Projectを始める。Hermes ParisとAppleが開催した『The Pulse of Sense』で森の中でコントラバスの演奏を行う。現在、佐賀「SAGA SEA 」のアーティスティック・ディレクターを務め、古民家 SHIKIORIを拠点に畑と田んぼに囲まれながら、世界中から集まる人々との対話を重ねている。『古民家 SHIKIORI』http://shikiori.net